米国務省は10月10日、国際海事機関(IMO)が検討している国際海運からの温室効果ガス(GHG)排出削減を目的とする国際条約改正案ネットゼロフレームワーク(NZF)に対し、反対の声明を発表した。
NZFは、総トン数5000トン以上の外航船舶を対象に、(1)GHG排出削減に向けて使用燃料のGHG強度を段階的に規制する、(2)ゼロエミッション燃料船の導入促進に向けてインセンティブを導入する、ことを中核とする条約改正案で、GHG排出が多い船は負担金を払い、大幅に削減すれば報償金を受け取れるしくみだ。
IMOではことし4月、GHG削減戦略を実現するための規制としてNZFに係る条約改正案で基本合意。10月に行われる審議で正式に採択されれば、2027年中に発効し、2028年に規制が始まることになる。
米国務省は今回の声明で「米国政府はIMOの提案を断固として拒否し、米国市民やエネルギー供給業者、海運会社と顧客、観光客の負担を増加させるいかなる措置も容認しない」と主張した。さらに、「NZFを支持する国々に代償を支払わせることで、米国の経済的利益を断固として守る。IMO加盟国は留意すべきだ」とした。
米国が示唆する対抗措置としては、(1)特定の船籍国による反競争的な慣行への対抗策として、調査の実施や新たな規制の検討を進め、潜在的な規制を検討する、(2)手数料や審査手続きの増加、再面接の義務化、C-1/D海事乗組員ビザの割り当て見直しを含むビザの制限、(3)新造商船、LNG(液化天然ガス)ターミナル、関連インフラなど米国政府との契約に関わる案件で商業上の制裁を科す、(4)IMO NZFを支持する国が所有、運航する船舶に対し追加の港湾使用料を科す、(5)「気候活動家型」の政策を推進する政府高官への制裁を検討する、などが明記されている。